「桜前線」

 

午後5時4分、裁判所玄関――

5時にロビーで、と待ち合わせした相手の姿を見つけられず、私は周辺をうろうろと歩く。
相手はきっちりした性格で、万一事情があって間に合わない場合は
必ず携帯に連絡を入れてくれるはずだ。
その彼女が連絡もなく、ここにいないということは何かアクシデントにでもあったのだろうか。

ちょうど春分が終わった時期で空はまだ明るいが、じきに暗くなるだろう。
事故ではなくても、携帯を無くして一人で困り果ててどこかで迷っていたら大変だ。
そうした心配もあって、私は少し冷静さを欠いた足取りで歩きまわりながら、その人を待っていた。

もう一度周囲を、探そうと玄関を見遣る。
すると、 近くにいた若い女性がくぐもった笑い声を漏らしながらこちらを見ていた。

若干むっとしながら、その女性をよく見る。見覚えのある人物だった。
――今日の私の裁判を見学していた、海外からの視察団の中にいたような……気がする。
黒いコートに白いストールを羽織り、コート中から黒のスーツとタイトスカートが覗いている。
ヒールの高いブーツを履いているせいか、女性にしてはスラリと背が伸びていて
きつい印象のある端整な顔立ちを愉快そうに綻ばせている。
ショートボブの髪はいわゆるプラチナブロンドで、同じ色を持つ待ち合わせの人物を思い出させた。

そういえば、胸元に見えるリボンを留めているブローチには見覚えがある。
これも、待ち合わせの人物がタイを留めるときに好んで使っていたものに良く似ていた。

そこまで観察して、私はギクリと肩を震わせた。

私が待ち合わせをした人物は、セミロングの髪をした小柄な少女のはずだった。
ただし、私の頭に入っているのは、最後に会った数年前の彼女の姿である。
年齢的にちょうどその頃から、彼女が成長期に入っていったことを
全く計算に入れていなかったことに、私は今更ながら思い当たる。

――だがそれにしても、変わり過ぎではないか?
成長期で体格が大幅に変わったとしても、彼女はまだ16歳のはずだ。
あんなに大人びて、きちんと化粧までしているはずは……。
たった数年で、そんなに変わるはずないはずだ。

いや、だが……そういえば。
私はずっと、自分の記憶を頼りに彼女を探していたが
送ってもらった写真に映っているメイは、こんな風貌だったかもしれない……。

念のため確認しようと女性の方に歩を進め、その前に立つ。
するとその人は、挑発するように背を反らして腕を組み、眉をひそめて笑いながら私に言葉をかけた。

「……もう15分も、私を探していたでしょう」
その声が、目的の人物であることを証明していた。

狩魔 冥。私の師匠の娘で、私にとっては妹のような存在だった。

「気付いていたなら、声をかけてくれればいいだろう」
少し不満げにそう応じると、メイが高飛車な笑みを浮かべた。
「だって、視察中に会釈をしたのに気付いてくれなかったんだもの。意趣返しよ」
その言動は、確かに私の知っているメイに間違いがなかった。

メイは普段アメリカに住んでいて、今回は仕事のため、数日間の予定で来日している。
彼女の父親である先生は日本で働いているため、
今夜、彼女は先生の邸に滞在することになっていた。

忙しい先生の代わりに、弟子である私が
今日の仕事を終えた彼女を迎えに来たというわけだ。

この後は先生の仕事が終わってから、メイと私と3人で食事をして
私が2人を邸まで送った後は、親子水入らずで過ごす。
事前にそういう段取りで話がまとまっていた。

「パパは8時までお仕事だそうね。」
私が頷くと、メイは銀色でシンプルなデザインの腕時計に視線を移した。
「今は5時……3時間あるわね。」

「どこかへ出掛けるならば送るが……どうする?」
メイは少し不機嫌そうな表情で首を横に振ると、溜息をつく。
「時差ぼけで疲れているの。できれば、ゆっくりしたいわ。」
「……そうか」

だとすれば、どこか紅茶の旨い喫茶店でも……と私が思案していると、
メイが何かを思いついたように小さな声を上げる。
「そう言えば、レイジは上級検事になったのよね」
「ああ……だいぶ前の話だが。」
そう言えば、メイとはそれ以前に会ったきりだったのだと、口に出してから実感する。

「ということは、自分のオフィスがあるのね?」
恐らく執務室のことだろうと思い、私は素直に頷く。
「じゃあ、そこを見学させてもらおうかしら」

話の流れから、そうなるような予感はしていたが……
「構わないが、特に面白いものはないぞ」
「お茶とソファくらいはあるでしょう?」
どうやら、私の部屋でくつろぐつもりでいるらしい。

「あなたのブレンドした紅茶、味見してあげてもいいわよ」
そう言って、メイは高飛車な微笑みを浮かべる。
それは彼女が気を許している時の顔だった。

成長した彼女に懐かしい表情を見出して、何だか安堵した私は、
それ以上楯突かず、彼女の希望を受け入れた。
「……ならば取って置きのものを用意しよう」

******

「なかなか綺麗にしているじゃない」
私の執務室の「見学」を始めたメイは、そう言って早々にソファに座り込み、
そこから部屋の中を何周か眺め回した。
執務室が守秘義務のある書類だらけだということはわきまえているらしく
とりあえずは客用のスペースに落ち着くことにしたらしい。

私が紅茶を振舞うと、メイは優雅な手つきでカップを口に運んだ。
少し驚き、考え込むような表情をした後に、メイが楽しげに微笑む。
「……まあまあね」
表情から察するに、私の期待通りに美味しいと思ってくれたようだった。
私も満足して、ニヤリと笑みを返す。

「そういえば、先生と会うのは久しぶりなのか」
メイの隣に少し離れて座り、私も自分の淹れた紅茶を啜る。
「そうね、2ヶ月ぶりだわ。」

その後でふと思い至ったように、メイが言葉を続ける。
「……レイジとは、もっと久しぶりね」
互いに自分の国を離れる時間などなかったので、メイと私は年単位で会っていなかった。
「そうだな。電話や手紙のやりとりはしていたから、身近には感じていたが……」

「実際に会ってみると、別人のようで驚いた」
素直にそう告げると、メイがふふ、と笑みを漏らす。
「大人になったでしょう?」
「ああ」
綺麗になったとも思ったが、それが咄嗟に口に出るほど、私は器用な方ではない。

「レイジは、雰囲気がちょっと落ち着いたわね」
「そうだろうか?」
実は他の人間からもそう言われることがあったが、あまり自覚はしていなかった。
「服の色使いが大人しくなったからかしら」
そう言いながら、数年の変化を探すようにメイは私の方をじっと見つめた。
段々と近付いてこられて、何となく……落ち着かない気分になる。

しばらくして、メイが、私の下瞼を指で辿った。
冷たい手が薄い皮膚に触れ、私は何故かびくりと身体を震わせる。
「……やつれたのかしら」
私の狼狽に一切気付かぬ様子で、独り言のような言葉を落として首をかしげた。
明るい照明の下だと、どうやら私の隈は目立つらしい。
「眠れているの?」
彼女が私を心配する時特有の、険しい表情が浮かぶ。

実際には、悪夢に苛まれる毎日が何年も続いていた。
ただ、最終的にはうなされ疲れて熟睡してしまうので、2・3時間はそれなりに眠れているはずだ。
「……それなり、には。」

それを根拠に断言してみるが、すぐに、ぴしゃりと撥ねつけられた。
「嘘をおっしゃい」
あっさりと、見抜かれた。
メイがカップをデスクに置いて、私の両頬を手で挟む。
「……よく、顔を見せて。」

2人の顔が、至近距離まで近付く。
それは昔、私がメイの体調を気遣う時にしていたことだった。

もともと私の方から平然としていたことをされているだけなのに
何故か、突然心臓が跳ね上がる。

――この行動は、10代後半の少女として、どうなのだろう?
あまりにも無防備ではないか?他の人間にもこんなことをしているのか?だとしたら大問題だ。
狼狽して、そんなことをグルグルと考え込んでしまう。

メイはしばらく私をじっと観察していたが、不意に溜息をつき、体を離した。

「……疲れたわ。」

不可解な行動に緊張して疲れたのは、むしろこっちである。
そんなことを言えばこの部屋で鞭を振るわれるのが明らかなので、私は何も言い返さない。

「レイジはもう、急ぎの仕事はないのよね?」
「ああ、キミの相手をする以外は。」
もう既定の勤務時間は終わっているし、前々からメイの来日の日程がわかっていたので
手間のかかりそうな仕事や予定をできるだけ入れないようにしていた。

「パパとの約束まで、あと2時間はあるわね。」
時計を眺めて、メイが独り言を漏らす。
それから私の方を向き直って、いつものように一見高慢にも見える笑みを浮かべて言った。

「私は少し眠るわ。――添い寝なさい。」

――今、メイは何と言った?

「大人になったのだからもう、そういった慣れ合いはしないと……君の方から言われた記憶があるのだが」
できるだけ冷静を装って突っぱねる振りをする。
だが、相手は暗黙の抵抗を、ものともしなかった。

「ここは寝室ではないし、肩を貸してもらうだけだから大して問題ではないわ」
「そんなことをしなくても、ソファを独占してもらって構わないのだが」

「……いいから、あなたも一緒に寝なさい」
有無を言わさない口調で、メイは自分が座っている横の空間をぽんと叩く。

ただの気まぐれや我儘だったら、いつものメイは要求を拒まれると徐々に癇癪を起こすはずだ。
しかし今はそういう様子ではない……ということは、これは必要を感じてのことなのかもしれない。
今日のメイは鞭の数が少ないように思えるし……もしかして、久しぶりの日本で、戸惑いを感じているのだろうか。
だとしたら、できる範囲で力を貸すのが、兄弟子である私の役目というものだろう。
もう一度拒めば鞭が振るわれるような予感もしたので、私は大人しく隣に座り直した。

メイが私の肩に、その頭を預ける。
「納まりが悪いわね。……もう少し肩を下げてもらえるかしら」
注文の多いお嬢様である。
「そうすると、私の身体が不安定になるのだが」

「私の頭にあなたの頭を乗せれば、多少マシになるはずよ」
特に逆らう理由がなかったので、私は彼女の提案通りに頭を寄せる。
「遠慮しないで体重をかけた方が、お互い安定するわ」
これも言われた通りに、身体を寄せる……が、そうするとぴったりと寄り添うような体勢になってしまった。

メイと触れた部分から、彼女の持つ空気と感触を感じる。
それはとても心地良いと同時に、妙に落ち着かない感覚だった。

慣れ親しんだ小さな妹の匂いと、知らない女性のような感触を両方同時に感じて
私の頭は安心して良いのかうろたえて良いのかわからずに混乱する。
メイの頭に当てた耳の奥から、自分の心臓の脈打つ音が強く響いた。

――今、私の隣にいるのは誰だ?

「レイジ……」
隣に聞こえてきた声は、先週電話で聞いたメイの声と限りなく近い。
「……どうした」
「ひさしぶりね、一緒に寝るの」

――“一緒”
メイの発した言葉によって、久しくが忘れていた感覚が唐突に蘇る。
それは、何の不安もなく重力に身を任せることができるほどの安心感だった。

もしこの先に広がるのが絶望であったとしても
必ず護られるという安心が、ゆっくりと身体から力を抜き去っていく。

「ねえ、レイジ」
しばらくして、メイがまた私に声をかけた。
だが、そのトーンは眠気を帯びて、とろんと融けるような響きを帯びていた。
「こうやって寄り添える人……身近に、いないの?」
「ああ……いない」
私の声にも、意外なほど力が籠っていなかった。
「……そう」
メイの声は、沈んでいるようにも安堵したようにも聞こえた。
「そういう人がいれば、もう少し……楽に、生きられる……でしょ……に……」
私を案じるような言葉を紡ぎながら、メイは眠りに落ちていった。

メイの寝息を聞きながら、自分の意識が途切れつつあるのを朧気に自覚する。
それでも、何故か声にしておきたくなって
私は本心からの言葉を、寝息に変わりつつある呼吸と共に漏らした。
「君が、いれば……十分だ」

その時、メイと寄り添うことをこの上なく幸せに感じて
このまま永遠に離れたくないと願っていたことだけは
まるで刻み込まれたかのように、今でも記憶の中に残っている。

******

悪夢以外の夢を、久々に見た気がする。

もう思い出せない内容を無理に思いだすことも特にせず、
私は、仰向けになっていた身体をゆっくりと起こした。
ふと見ると、私のデスクの椅子に悠然と座って、メイが紅茶を啜っている。

彼女は私は起きたことに気付くと、いつもの薄笑いを浮かべて私に話しかけてきた。
「気分はどう?熟睡とまではいかなかったみたいだけれど」
「ああ……悪くない。」
いつもより、少し頭がスッキリしているように感じた。

「勝手に使わせてもらったわよ」
メイがカップを少し差し出して、茶器を使ったことを私に告げた。
「……ああ」
子供の頃から何でも私に張り合おうとしていた彼女は、
私の趣味である紅茶のことにも詳しいので安心して頼むことができた。

あなたも飲む?と聞かれ、ぼんやりとした頭のまま素直に頷く。
楽しそうに茶器の用意を始めるメイの姿を見て、私は不思議に思う。

記憶の中のメイの姿や最近の電話でのやりとりを思い出すと、頻繁に鞭で叩かれたり
妙な闘争心剥き出しで突っかかってこられたりしたものだが……
今日のメイは、別人のように穏やかで楽しそうに見えた。

まるで、急に言動が大人になってしまったような、それでいて屈託のなかった子供のころのような……
どちらにしろ、私の認識しているここ数年の狩魔冥ではない。
「えらく機嫌が良いのだな」
言葉を選んで、その理由を探ってみることにする。

すると、温めたティーポットに湯を注ぎながら、メイがはにかんで笑った。
「だって、久しぶりにパパと一緒に居られるんだもの。」

その言葉と表情が、あまりにも幼くて……私はほっとした。
変わってしまったように見えた姿の中にあるのは、やはり昔と変わらないメイなのだ、と。

だから、先程身体を預けた時に抱いた感情も、何かの勘違いなのかもしれない。
いや、きっと勘違いなのだ。
妹同然で7つも年下で、しかも師匠の娘でもあるメイに対して
よりによってこの私が、あのような思いを抱くなど――

ふとその時、いつの間にか隣に戻ってきたメイが、私の身体に手を伸ばしているのに気付く。

たったそれだけのことで、心臓が私の全身を震わせる。

一瞬だけ見当識を失った私は、思わず身体一つ分隣に退いた。

――前言撤回、だ。
その時私は、まざまざと実感した。
自分が目の前の少女を……女性として意識しているのだと。

先程の思いは一時の気の迷いなどではなく、小さなきっかけによって
それまで積み重ねてきたものが花開いたものなのだと、認めざるを得なかった。

突然認識したそれらのことに、私はただ、しばらくうろたえることしかできなかった。

一連の動揺を見ていたメイは、しばらく不思議そうな顔をしていたが、
ある時、まるで私の弱みでも掴んだかのようにニヤリと笑うと席を立った。

「よっぽど気に入ったようね」
ふと自分の身体に視線を落としてみると、メイが巻いていた白のストールがそこにあった。
そして私の両手が、それをしっかりと握っている。
どうやらメイは、それを返してもらおうと手を伸ばしたらしい。

「す、すまない!すぐに……」
慌ててメイにそれを差し出すと、彼女は先程の表情を崩さぬままにそれを受け取る。
そして、ストールを手早く畳むと、私の手にそれを押しつけた。
「いいわよ。そんなに気に入ったのなら、あげるわ。」
「それは、悪い。これは、大事な防寒具だろう」
返そうとするが、メイは蒸らしていた紅茶を注ぐため両手がふさがっている。

「大丈夫よ。だって」
私のちょうど目の前で、メイがティーポットを傾けた。
「もうすぐ春だもの。」

桜の葉を使った紅茶の湯気がかすかに香る。
春にちなんだ香りとメイの言葉が突然、私に新しい季節の到来を思い知らせた。

******

先生と再会したメイは、先生の好む利発な姿を保ちながらも
嬉しさを隠し切れない様子で、先生にまとわりついていた。

後部座席で再会を愉しむ二人をミラー越しに眺めながら、
私は微笑ましいような寂しいような……複雑な溜息をついた。

外見は大人っぽく理知的なのに、中身は子供っぽくジャジャ馬で、すぐ鞭を振るう。
そんな彼女を、私が何よりも愛しいと感じていることは、どうやら認めるしかないらしい。

今日メイに感じたさまざまな気持ちを、ゆっくりと順に辿っていく。
彼女への感情には、ただ見守りたいというだけではなく、そばにいたい、寄り添いたい……
もっとはっきり言ってしまえば、手に入れて腕の中に閉じ込めてしまいたいくらいの思いが含まれているようだ。
ただ、冷淡だと思っていた自分に、そんな熱い感情を抱ける部分があったことが信じられなくて
まだしっかりとは受け入れることができないのだが。

そんなことを考えながら頭を整理していくうちに……私の中に、ある一つの疑問が浮かんだ。

――彼女の方は……私をどう思っているのだろう?

突然降ってきた深刻な謎に動かされるまま、しばらく彼女を観察する。
屈託なく先生に話しかける彼女の姿を眺めているうちに、私は一つの結論を得た。

――彼女には、色恋沙汰はまだ早いようだ。

先生と接している様子を見ている限り、先生以外の人間が彼女の視界に入る余地はなさそうだ。
そして、これまでの長い付き合いを思いだしていくと
私は恐らく、彼女の中では「張り合う相手」か「手のかかる弟」止まりの存在のようだと考えられた。

BGM代わりにかけていたラジオのニュースが、桜の開花予想を告げている。
今年は全国的に、例年より遅咲きになるという話だった。

「まだ……しばらく待つ必要がありそうね」
この地方の予想日が読み上げられた時、メイがぽつりと呟いた。

二人の会話の邪魔にならない程度に、私もぽつりとそれに応える。
「……そのようだな」

そう。まだしばらく待つ必要がある。
メイを手に入れたいと願うのであれば、彼女がもっと大人になるまで
……父親以外の男に目が向けることができるようになるまで、待たねばならないだろう。

もちろん、彼女が私を選ぶかどうかは、その時になってみないとわからない。
何しろ私は彼女より7つも年上で、兄弟のような関係にあるだけに、望みは薄いのかもしれない。

それでも恐らく今の立ち位置が、彼女にとって一番近い「異性の他人」であることは間違いない。
少しぐらいは期待して待ってもいいだろう……願いを込めて、私はそう信じることにした。

私はミラー越しにちらりとメイを見る。
遅咲きの桜は私の思いなど知らぬまま、幸せそうに父親との会話を愉しんでいる。

その花が開くのは、一体どれくらい先のことなのか……それはきっと、彼女も知らない。

 

――もっとも、二十歳を過ぎて自分の気持ちに気付いた私の方が、本当は“遅咲き”なのかもしれないが。

 

<おわり>